中学時代から現在に至るまで、半世紀にわたり仲良くしてくれている、私にとって最も大事な友人がいます。
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<<<出会い>>>
彼とは中学1年生の時に同じクラスだったんですが、それ以降一度もクラスが一緒になることはありませんでした。
どちらも運動部に所属していましたが、彼は華麗な器械体操部、かたや私はヌルヌル汗臭い柔道部でした。
ホントは中学校入学当初、私は体操部かブラスバンド部に入りたくて迷っていたんですが、厳しく頑固な父の命令でやむなく選択肢にはなかった柔道部に入ったんです。
それでも入るつもりもなかった柔道部の練習を、嫌々逃げ回りながら1年続けたんですよ。
中1の3学期の終わり頃、父親の言いつけも聞かず、私は彼の所属する器械体操部に転向(部?)しました。
ただ、体操部に転向した理由は、そこに彼がいたからというのもあったんですが、もともと私は体操部に入りたかったわけで、逆にたまたま彼もそこにいたということなんです。
クラスは別々になった私たちでしたが、それ以来放課後の部活で毎日顔を合わせることができました。
飛んだり、跳ねたり、宙返りをしたり…。
鉄棒をやって手の皮がむけ、両手に包帯をぐるぐる巻きにしたり…。
<<<毎日疲れてヘロヘロ>>>
そんなある日のことです。
外はまだだいぶ明るかったので、土曜日の部活が終わってからだったんでしょうか、彼の家まで一緒について行ったんです。
疲れ切って、かなりお腹を空かせてヘロヘロだった二人は、ガス欠寸前。
その状況を打開すべく、彼は家人不在の自分ちの台所かどっかから、食べられそうなものを探して持ってきたんです。
それはこんな魚肉ハンバーグでした。
<<<最高のごちそう>>>
わりと不器用な彼は、それをざっくり大きく半分に切って、フライパンで焼いてくれたんです。
焦がし醤油っておいしさをそそる、メッチャいい香りですよね。
そんなことを知ってか知らずか、少し焦げ目のついた魚肉ハンバーグに、彼はちょっとだけ醤油を垂らして…。
ジュワァ~ッ‼
すきっ腹に焦がし醤油の香りはたまりませんよね。
魚肉ハンバーグは1個だけだったので、あまり腹の足しにはならなかったんですが、あの時の魚肉ハンバーグは、人生の中で一番美味しかったと記憶しています。(ちょっと大げさですが…(汗))
私は彼のおかげで、焦がし醤油は最強の味付けになるってことと、腹ペコの時はさもない魚肉ハンバーグみたいなものでも最高のごちそうになるってことを知りました。
今、私がこうして料理を頑張っていられるのは、もしかしたらあの時彼が食べさせてくれた、最高のごちそうのおかげなのかも知れないなって思ったりします。
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半世紀を超えた今、君はもう覚えていないかも知れないけれど、あの時の君にひと言だけお礼をいいたい。
ありがとう。